厭世百合日記

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【おすすめ百合漫画】『私は君を泣かせたい』のあらすじやみどころなど

しばらくこのカテゴリーから新着記事を出していなかったので、今回は久々におすすめ百合漫画の紹介をしたい。

その名も『私は君を泣かせたい』という作品。

結構前から紹介しなきゃと思っていた逸品で、友人に貸していたのが先日ようやく帰ってきた(曰く、書庫に連ねて完全に私物化してしまって返し忘れていたとのこと)ので改めて読み返し、記事を起こすことにした。

イラスト・ストーリーともに好印象で、友人ともどもイチオシしたい一冊だ。

 

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あらすじ

他人を寄せ付けない優等生・相沢羊と、誰もが怖がる不良女子・虎島ハナ。

誰かに弱みを見せるなんて有り得ない。

そんな孤独で不器用な2人が涙を繋ぐ、優しいガールズストーリー。

 

1巻裏表紙より

 

王道展開

億劫な学校生活を終えて一人映画館で自分の世界に入っていると、目の前に感動で涙する女の子が・・・。

主人公の相沢羊と不良少女の虎島ハナは、映画館で出会って以来他人には見せられない「本当の自分」を見せ合うことが出来る仲としての結びつきを得る。

この展開自体は百合漫画としては王道、悪く言うと手垢のついたもので『やがて君になる』なんかがその代表例だ。

詳細は上のリンクに譲るが、『やが君』では両者が「誰かを特別だと想う気持ち」が分からない者同士であることを認知してから惹かれ合う。

しかし、この作品の相沢羊と虎島ハナはそうではない。

相沢羊が映画館で泣いている虎島ハナにハンカチを差し伸べたのは、(少なくとも直接的には)彼女のキャラクターに好奇心が寄せられたからではなく、単なる偶発的なもの。(むしろ優等生の相沢羊は不良の虎島ハナと積極的に関わりたくないと思っていたくらいだ。)

それはハンカチを渡した後の相沢羊のセリフからも読み取れる。

何やってんだか

まぁどうせ学校で会っても私のことなんかおぼえてないでしょ

互いの秘密を知る→急接近、という構造がひっくり返ることで、その出会いが運命的に見えてこないだろうか?

この一連の場面は非常に印象的に描かれているのでぜひともチェックしておきたい。

 

相沢羊の壁

この作品は一見する虎島ハナにフォーカスがあてられているように感じられる。

彼女が相沢羊と出会い、映画研究部に所属することで少しずつ学校生活へ馴染んでいき、友達も増えていく。

しかしこのストーリーは決して不良の更生物語なんかじゃなくて、実は相沢羊の人格、生き様こそがこの作品のテーマなのではないかと思わざるを得ない。

主人公から見た不良娘というよりはむしろ虎島ハナから見た相沢羊の姿、あるいは相沢羊自身が振り返る自分の在り方のほうが重点的に描かれている。

相沢羊の周りには見えない壁がある

アイツの方こそそんなに必死に取り繕わなくても別に誰も気にしないと・・・

「優等生」の相沢羊はいつも周囲の人間によく接している。

絶対に悪印象を持たれないように必死で、それは部室と教室とで虎島ハナに対しての態度がガラリと変わるほどだ。

したがって彼女は他人との本質的な距離感を理解していない。

だから虎島ハナのように、彼女とただ仲良くしたいという人間があらわれると困惑する。

いつもはもっとうまく出来てるじゃない

 相手の顔色を見て当たり障りのない言葉を言うだけでいいのに

・・・こういうときどうしたら良かったんだっけ

相沢羊の気持ちに少なからず共感する人は多いはず。

彼女がどのように殻を破っていくのか、心境の変化とともに追っていきたいところだ。

 

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自然な日常の中の関係

私がこの作品のなかでも特に好感を持てたのは、あくまで自然なありふれた日常のなかで2人の関係が描かれているということだ。

これだけだと「何を言っているんだ」と思われてしまうので例を出して説明すると、例えば『citrus』なんかはキスシーンというものがとても多く、キャラ同士が唇を合わせることで互いの愛を確認しあっている。

しかし、このような肉体的な繋がりを強く求める作品は、行為に頼ってしまうためにキャラクターの心境が読み取りにくいような気がしてならない。(別にこういった作品を非難する意思はなくて、むしろああいう刺激的なシーンは読んでいて心地いいものだし、あれはあれで好きだけど。)

一方で『私は君を泣かせたい』での2人は言葉のキャッチボール、つまり対話をメインに互いの距離を縮めようとしている。

教室や部室での何気ないやり取りこそが彼女らを繋ぐ一番の要素だ。

だからキャラの会話というものに注目して読めるし、何度でも読み返せる。

登場人物の心境を汲み取りたい人には絶対向いている作品だと思う。

 

まとめ

物語の深み具合では『たとえ届かぬ糸だとしても』と結構同列くらいじゃないかと思うくらい充実していて、読み返すごとに新しい発見がある作品だ。

なにより、日常の学校生活の中でのお話だからとっつきやすい。

百合の入門作品にもぴったりではないか?

とにかく、イチオシの漫画です。